
フロン排出抑制法では、業務用冷凍空調機器の管理者に対して、定期点検の実施が義務付けられています。点検頻度は機器の種類や規模によって異なり、7.5kW以上の業務用エアコンは年4回以上の簡易点検が必要です。また、圧縮機の定格出力が7.5kW以上50kW未満の機器は3年に1回、50kW以上の機器は1年に1回の専門家による定期点検が必要です。違反した場合は、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
【具体例】
大型スーパーマーケットの場合、店舗用エアコン(75kW)と冷凍冷蔵ショーケース(計60kW)について、年1回の専門家による定期点検と、3ヶ月に1回の簡易点検が必要となります。
2. 業務用フロン機器の点検方法と記録
業務用フロン機器の点検は、簡易点検と定期点検の2種類があります。簡易点検では、機器の外観点検、異音・異臭の確認、温度測定などを実施します。定期点検では、専門知識を持つ者が専用の検知機器を使用して、漏えい箇所の特定や修理の必要性を判断します。点検結果は、機器ごとに点検記録簿を作成し、機器の廃棄まで保管する必要があります。また、漏えいが確認された場合は、速やかに修理を行うことが求められます。
【具体例】
オフィスビルの管理者は、屋上設置の業務用エアコン(30kW)について、毎月の簡易点検では運転音の確認や室外機の損傷チェックを行い、3年に1回の定期点検では、冷媒漏えい検知器を使用した専門的な点検を実施します。
3. フロン漏えい時の対応と報告手順
フロン漏えいが発見された場合、速やかな対応と適切な報告が法令で義務付けられています。まず、漏えいを発見したら、直ちに機器の使用を停止し、専門業者に修理を依頼する必要があります。修理完了までは、可能な限り代替機器を使用するなどの対策を講じましょう。漏えい量が1,000CO2-t以上の場合は、事故として国への報告が必要です。報告は、漏えい発見から30日以内に行わなければなりません。また、都道府県知事への届出も必要となります。報告書には、漏えいの原因、漏えい量の算定根拠、再発防止策などを詳細に記載することが求められます。
具体例:
冷凍冷蔵設備(定格出力7.5kW)で年間50kgのフロン漏えいが発生した場合
1. 直ちに設備の運転を停止
2. フロン排出抑制法に基づく漏えい量の算定(R404Aの場合、50kg×3,920=196,000CO2-t)
3. 専門業者による漏えい箇所の特定と修理
4. 漏えい報告書の作成と電子システムでの報告
5. 都道府県知事への届出書提出
地球温暖化対策の重要性が増す中、フロン管理の適切な実施は企業の社会的責任となっています。定期点検による早期発見、適切な漏えい対応、正確な報告書作成は、環境保護と法令遵守の両面で重要です。フロン排出抑制法の基準に従い、確実な点検記録の保管と報告を行うことで、企業のコンプライアンスを確保できます。また、定期的な従業員教育や管理体制の見直しを通じて、フロン漏えいのリスク低減に努めることが望ましいでしょう。小規模な漏えいであっても、早期発見・早期対応を心がけ、環境負荷の軽減に取り組むことが求められています。予防保全の観点から、機器の定期的なメンテナンスや更新計画の策定も重要な管理項目となります。